戦前の合気道では、「ワザ」は「業」と表記されることが多かったように思いますが、今は「技」が主流でしょう。
それにつれてか、「型」も自分の修業のための鍛錬業よりも、他人に見せるパフォーマンス技が主流になっていると感じます。

僕は結構料理もしますが、料理で大事な「出汁」を昆布やかつお節で取るとか、一切しません。
「だしの素」や「ほんだし」のような風味調味料を使います。
今や多くの家庭でそうなんじゃないでしょうか。
家庭だけでなく飲食店でも本格的な出汁の取り方してるところ、少なくなってると思います。
まず多くのお客さんが出汁の良し悪しがわかりません。もちろん僕もわかりません。
お客さんがわからないということは、求めていないってこと。求められてもないのにわざわざ時間とお金を掛けて出汁を取る必要は無いですよね。
何十年か後には出汁の取り方を知る料理人はいなくなって、調味料会社の工場の人しか知らないなんてことになるかもですね。
武道の型だって稽古だって、お客さんが求めても無いようなことをやる必要は無いと思います。
もちろんやりたきゃやりゃあいいですよ。自己満足のために。
まあでも、単なる自己満足ですから、お客に自分の満足感を押し付けては、お客は減りますよね。
商売にはならない可能性が高いということを覚悟してやるべきでしょう。

しかし、風味調味料にばかり頼るようになって、出汁の取り方を忘れてしまったような料理人は料理人失格だと僕は思います。
本来の型の意味や稽古の意味を考えること無く、パフォ技やデモ技だけやる、教えることしか出来ない人も、武道家失格と僕は思っています。
なので僕は、客が減ろうと経営的に赤字になろうと、自分の修業のための鍛錬業は教え続けようと思います。
その代わりに、専門店でなくファミレスみたいな道場や稽古場も作ります。そして各道場や稽古場で違いを作っていこうと思います。

出汁は料理の根幹です。型も稽古の根幹です。
本格的な根幹を求めるかインスタントな根幹を求めるか決めるのは、お客さんであり生徒さん。
場違いなところに来て、そこに無いものを求められたら、「ここにはおません。欲しかったらどこそこに行きなはれっ」とキッパリと言えるようにしたいと考えています。