合気道初心者の方々へ

合気道の初心者の方には、このような方が多いのではないでしょうか。

「現在私にはゴールなんてものも目標も無い」

まあ、僕が「合気道はうんぬん･･･」と語りだすと、「今の自分には難しい･･･」と言う人はたくさんいます。
大抵の人は「難しいから結構」と言うんですが、そう言う人たちも心の底から、「ゴールがない」なんて思ってはいないはずだと思います。
きっとゴールというものがあると信じ、それを求めようとしていらっしゃるのだと思います。ただ、そのゴールというものが、ご自身で具体化されていなくて漠然としたものであるんじゃないかと感じています。
ここをご覧の皆さん方は、自分なりの何かゴールをお持ちか、それを求めていらっしゃる方々だと思ってます。
しかし多くの方がゴールについて考えることを後回しにする。そして今自分に出来ることに一生懸命になろうとする。
今自分に出来ることを頑張るというのは大切なことです。それをしないのは最初からお話になりません。
でもね、まあ、こういう話も聞いてください。

「今、一生懸命！」ということを「戦闘」というものに例えてみます。
「戦闘」を一生懸命しなくては勝てるものも勝てません。でもね、その「戦闘」の方向自体が間違ってた場合はどうなるのでしょう。
敵の中心部に的確な攻撃を加えるならいい。しかし、あまり関係のない周辺に対していくら苛烈な攻撃を仕掛けても、相手にはなんの影響も与えない場合もあるでしょう。
ですから「戦闘」の前には必ず「戦術」というものを立てなければなりません。
「戦術」の場合は何から何まで一生懸命ではいけません。出来るだけの効果を得るためにポイントを決めて集中攻撃を掛ける。もちろんそれを相手に悟られないように囮作戦やフェイントをかましたりもしなければなりません。
まず、「戦術」を決めて「戦術」に則って、「戦闘」を行わなければ勝利は望めないですね。

国と国などの大きな勝負を考えた場合、「戦術」にだけ勝利しても駄目な場合があります。
個々の戦いの勝敗に拘ることなく、大局的に勝利を収めなければなりません。
そこで「戦略」というものが必要になってくるのですね。
「戦略」に従い個々の「戦術」を立て、それぞれの役割に応じた「戦闘」行為を行う。
だから大きな戦いになればなるほど「戦略」と「戦略」の戦いになり、より相手の「戦略」を見抜き、それに対応する「戦略」を立てることが出来るかが勝利の分かれ目になるんですね。

一般の企業でも一緒です。
まずはトップの経営方針や経営計画に則って、各担当役員がそれぞれの計画を立案し経営会議に掛ける。
そこで決定された事柄が各部署の部課長クラスに下ろされて、部や課なりの計画が出来、また下に下りていく。
国家の計画もそうですよ。まずは長期計画、それを実現するための中期計画、そして短期計画と。
だから国の舵取りをする人は長期的な視野で未来を見通せる人が必要ですね。
それには自己の信念がしっかりした人はっきりした人のほうがいいわけです。
なにせ、はっきりしていないと、間違ったときになかなか気づかず、実はとんでもないところに行ってから気づいて、後戻りするのに時間が掛かったり仕方なしにそのまま行ってしまったり、ろくなことになりません。

正しい計画の立て方は、まず大きいものから立てるものです。
大きい計画に基づいて、それを実現するための計画を立てる、そしてその次･･･
夏休みの宿題も一緒でしょう。まずは夏休み全体の計画を立てるでしょう。
その計画に従って毎日毎日のノルマを確実にこなしていけば、なんのことはない。
その日その日の行き当たりばったりでは、夏休みの終わり頃になって慌てることになるでしょう。
ま、最近は夏休みの宿題などは親がやるのが当たり前。子供はもっと高度な勉強をって家庭もあるようですけどね。

ですから合気道においても、まず最初に学ばなければならないのは、「合気道って何？」っていうことなんだと思うのです。
実際に技が効くなんてことは修行に長い年月が掛かります。それまで合気道の何たるかを学んでおかないと、はっきり言って、何年かする間にどこか違う道に迷い込んでいるかも知れません。
もし間違いに気づいても後戻りするのに膨大な努力を要したり、もう戻れなくなったり、または間違いにさえ気づかなくなったりしてしまいます。
そりゃあね、「難しい」って言われりゃあ難しいかも知れません。
でも当たり前でしょ。長期計画なんだから。長期計画で行うべきことがすぐに実現出来るわけないじゃないですか。すぐに実現出来るものは長期計画じゃないでしょう。

それでもなかなか頑固な人もいて、目の前の自分が理解出来ることの積み上げでなんとか高みにたどりつこうとする人も多いです。そしてそういう人は自分に自信を持っている、あるいは信念を持った人も多いです。
やはり過去にそれだけの実績を上げてきた人なんでしょうね。
しかし、本当に自分に自信があるのでしょうか。確固たる信念と言えますか。心の中に何かしらの不安はないですか。もしかして、その漠然とした不安をなんとかしたくて、その解決を合気道に求めようとしているのではないですか。

断言いたします。合気道にはその解決の方法が必ずあります。合気道にはなんでもあります。
まず勉強してください。探してください。見つけてください。そしてひとつひとつ稽古で確かめてください。そしてきっちり自分のものにしていってください。
それで終わりじゃないです。また新しいものを探してください。
それが合気道の正しい修行の仕方だと思います。

ご自分を信じる気持ちは大切なことですし、自分に自信のない人は嫌いです。自分を信じられずに他人を簡単に信じるようなやつも嫌いです。
でもね、合気道に関してだけははっきり言いたい。
合気道に出会ったあなた自身を信じるように、合気道も信じてみませんか。なぜなら合気道はたんなる武道ではないからです。
合気道は宇宙全般に関する教えです。
合気道を信じることは宇宙を信じることなんです。

そして宇宙とは、実はあなた自身なんです。